ココ色吐息

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若冲の世界

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もうおよそ2週間ほど前となってしまいますが、若冲展へ行きました。

偶然、近くの本屋で若冲展の割引券を手にしたのが展覧会を知ったきっかけだったのですが、テレビの煽りやツイッターで見た混雑状況を見て、こんなに人気だったのか!と改めて驚いてしまった。

そもそも私が伊藤若冲を知ったのは、何年か前の『美の巨人たち』というテレビ番組。
そこで取り上げられていたのは、金毘羅宮奥書院の『花丸図』。
これがとても印象に残っていて、それまで日本画などは特別興味があったわけではなかったのだけれど、伊藤若冲という絵師の名前は私の頭にしっかり刻み込まれたのでした。

『花丸図』が強く印象に残った点は、精緻に描かれた花の絵や、極彩色もちろんのこと、枯葉や穴の開いた病葉まで描いたところであります。

写真やカメラに興味を持ち、花や景色をしきりに撮る時期がありましたが、ただただ美しい景色や花よりも、少し枯れたり錆びたりした景色が、ずっと気になっていました。
それをいかに印象的に美しく写せないものかと試行錯誤したりもしましたが、気がつけば辿り着けないまま断念しちゃっていたな。いけねえいけねえ。

だけれど、一見して醜ささえ感じるところに美しさもある、と感じていた私に、その若冲の『花丸図』はスッと飛び込んできたのです。
美術の詳しいことは何もわからない、だけど伊藤若冲の絵はとても好きだ、と思いました。

だからといってそこから若冲を掘り下げてきたわけでもなかったのだけど。
だけど一度でもいいからこの目でこの絵を見たい、とは思っていたら、若冲展が開かれているじゃああーりませんか。

でもしばし悩みましたよ。なんせまずどえらい混雑ぶり。プラス、ド金欠。
だけど、この混雑を攻略するにはまずチケットは前もってゲットすべし、というブログを拝見し、オンラインをポチり。見るしかない。

混雑状況に、210分やら340分などという驚愕の待ち時間を見て、待つくらいなら諦める精神で生きてきた忍耐力のない私は果たして待てるのだろうか……という不安を抱きつつも、オンラインでチケットを購入してしまった以上は行かねばならないという半ば義務感に押され、娘の登校時間と同時に家を出発し、電車に揺られ上野の東京都美術館へ。

はじめはね、美術館の位置を間違えていて、お!こんなもんか!よゆーよゆー♪って思ってたんですけどね、美術館の位置がわかってからはゴールの見えない長蛇の列に不安しかありませんでした。

何がってトイレ。
お友達やご夫婦や親子でいらしてる方は場所を取っておいていただけるわけですよね、何時間という待ち時間であっても、途中に訪れる厠へ躊躇なく寄れるんです。
暑さ対策や暇対策は完璧だったんですね。日傘や飲み物、本を持参。カバンはリュック。だけどトイレという試練を忘れていた。
しまった、と思いましたねえ。母を誘えばよかった、とちょっとよぎりました。(トイレのためってだけじゃないですけど)

一体あと何時間待たなければならないのかもわからない行列に並びながら、時折注ぐ日差しを日傘と木陰で遮りながら、だけれど飲み物には怖くて手がつけられないで、水分補給をしないで数時間耐えることが可能なのか、トイレが我慢できなくなったら、ここで熱中症で倒れたら、今日この時間しかチャンスのない若冲展を棒にふることになる、絶対この行列を離れるわけにはいかない……!

というわけで耐えに耐え、チケットを窓口で提示できたのは、並び始めてからちょうど4時間後、でございました。
並んだ時に「ここが最後尾」という立て看板を持ったスタッフさんが「今から並ぶと4時間です」と叫んでいたのはまこと事実でありました。それを聞いた時は、「大げさなことを言いやがって、んなわけない」と思っていたんですがね……。

今からやっと若冲が見れる、というのに、チケットカウンターを通り過ぎた時に全てを成し遂げた感に一瞬襲われ、違う違う、これからが本番だよ、と自身に言い聞かせました。

しかし本番となっても試練は変わらなかった……。
それだけの行列ができたのだから当然会場内も混雑しているだろうことは予測できたのだけれど、想定以上の混雑ぶりで無事に見れるのだろうかと不安がよぎる……。

けれど、そんな不安はなんのその。ここまでたどり着いたんじゃ、見たいんじゃあああ、という根性もあったので、ここはしおらしく謙虚にいても無意味、多少図々しくったって近くへ行く、と気合いを入れて寄れるとこは寄り、念願の若冲、堪能してまいりました。

もちろん、ゆっくりじっくりは叶いません。
次から次へお客さんは押し寄せるし、混雑している様子は嫌でも肌で感じますから独占もできません。
でも可能な限り味わってきました。

素晴らしい。作品について細かく感想を書けるほど精通してもおらず、ただただ乏しい感想しか述べられませんが、4時間並んでも見にいってよかったと心から思えるほど、素晴らしいものでした。

色鮮やかな色彩はもちろん、計算された絶妙な構図に遠目から見ても圧倒され、(厳密には全然違うけれど)フラクタル図形のごとく限りなく寄っても描写が曖昧になることがなくどこまでも精緻で、その細やかさを想像すると頭がクラクラとしてくるほど。

だけれど、時に同じ人物が描いたと思えないほど大胆な作品もあったり、ゆるきゃらみたいな絵が登場したり。
極彩色の鮮やかな絵もあれば、墨の濃淡だけで描いた絵もあり、モノトーンを超えた鮮やかさがそこにはある。きっとこういう風に光が当たっていたんだろう、こんな色をしていたのだろうと想像させてくれる余地がある。
若冲の絵は、見るものを、その景色の中へ誘わせてくれる、それを感じていました。

一番の目玉であった『釈迦三尊像』と『動植綵絵』は圧巻。
できることなら誰もいない中であの全ての絵に囲まれたらどんなによかったか、と思いますがそれは見に行った人みんな同じ気持ちだと思います。

前もって勉強していかなかったので、『釈迦三尊像』と『動植綵絵』がどういった経緯で描かれたものなのかも何もわからないまま、一枚一枚見やすいものを中心に眺めて行ったのですが、個人的には雪を描いた絵や、梅の絵が好きでした。静かで品のある落ち着いた色彩の中に、時間があって。

帰ってから『動植綵絵』を振り返ってからは、「芍薬群蝶図」が一番好きになっていました。
これは単純に個人的に構図といい色合いといい好みです。

人が多すぎることと、4時間の待ち時間が効いて体が悲鳴をあげていたこともあり、1時間ばかりで鑑賞は終了。終わって美術館を出る頃にはいろいろネジが吹っ飛んでしばらく呆然としたまま上野駅まで戻っていました。

ゆっくりじっくり見れなくてもこれだけ感激できた若冲作品ですので、もっともっと思う存分味わえたら……、足腰背中の痛みなど気にせず観れたなら……、と要望はキリがありませんが、それでも本当に素晴らしかった。見に行ってよかったと心から思います。

混んでるしゆっくり見れそうにないし疲れそうだし……とあきらめていくのをやめないで本当によかった!
見ていなかった後悔に比べたら、長時間のトイレの我慢と(笑)足腰背中の痛みなんてまだまだマシです。なんとか体調悪化もせずに無事に観れた自分も褒めたいです。よくやったよ!(笑)

また、改めて美術館はとても刺激的であり、価値観や気分を一新させてくれる場所だと痛感。
若冲展をきっかけに、また美術館や美術展写真展などに足を運んで、いろんな世界を知りたいと思いました。美術はいいね!

素敵な時間を得ることが出来ました。
伊藤若冲の作品には簡単にはお目にかかれませんが、また機会があったら見たいです。

いつかーできることなら、金毘羅宮奥書院の『花丸図』がこの目で見れたなら〜〜!



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by koco_hinata | 2016-05-31 22:50 | art | Comments(0)